『初心忘るべからず』を教えてくれる庭

昨日は、S市個人邸のお庭のお手入れに伺いました。このお庭は、私が庭師として初めて作らせていただいた思い入れのある場所です。

造ったのは15年前になりますが、今でも定期的にお手入れに入らせていただいており、ありがたい限りです。

ここに来ると、当時の自分の精一杯の創意工夫を懐かしく思い出し、また「今の自分ならどんな庭を造るだろう?」と自分に問いかけたい気持ちになります。

室町時代の能楽の大成者、世阿弥の言葉に「初心忘るべからず」という有名な言葉があります。『花鏡』という伝書に残る言葉で、「初めの志を忘れてはならない」という意味で多くの人が理解されていますよね。でも実際はもう少し深い意味があるそうです。世阿弥にとっての「初心」とは、新しい事態に対応する時の方法であり、試練を乗り越えていく時の戦略のことを指しているそうです。つまり「初心を忘れるな」というのは、人生の試練の時に「どうやってその試練を乗り越えていったのかという戦略を忘れるな」という意味になります。普通に考えられているような「最初の志」ではなく、最初の試練や失敗が「初心」という言葉の本当の意味に近いんですね。いまだ経験したことのない事態に対して、自分の未熟さを知りながらその事態に挑戦していく心の構えであり、姿にほかならない。その姿を忘れてはいけない。

…お手入れさせていただきながら、今の自分の力でお庭をもっと元気にしたいという気持ちが湧いてきました。「初心忘るべからず」いい言葉だなぁ。

写真は施工前です。施工後の美しくなったお庭もアップしたかったのですが、すっきりして背景が伝わりすぎてしまうため断念しました。

参考図書:「処世術は世阿弥に学べ!」土屋恵一郎


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