「令和」の出典『梅花の宴』を読み解こう!

 

令和元年が5月1日にスタートし、元号が平成から令和に代わり4か月が経ちました。新元号「令和」が現存する日本最古歌集「万葉集」からの出典であると発表された瞬間から、万葉集は一躍脚光を浴びています。すでにご存じの通り「令和」は万葉集巻五・八一五~八四六番歌の前に置かれた漢文の「序」から採られました。皆さんの中にも、書店にならぶ万葉集関連の新書を手に取って、知りたいなと思った方がたくさんいらっしゃるのではないでしょうか?

というわけで今回のボタニカル研究所のブログでは、いつもの植物のある暮らしをテーマにした内容からすこし間口を広げて、美しく和やかな日本人の心を万葉集の「梅」にまつわる歌とともにご紹介しようと思います。

 

初春の令月にして、気淑(よ)く風和らぎ

梅は鏡前(きょうぜん)の粉(こ)を披(ひら)き

蘭は珮後(はいご)の香(こう)を薫らす

(梅花の歌三十二首 序 巻五)

【口語訳】時あたかも初春の好き月、空気は美しく風はやわらかに、梅は美女の鏡の前に装う白粉のごとく白く咲き、蘭は身を飾った香のごとき香りをただよわせている

 

「梅花の歌三十二首」とは天平2年(730年)に大宰府の長官であった大伴旅人が主催した「梅花の宴」で読まれた歌々です。「中国には多くの梅の詩がある。われわれはこの庭の梅を和歌に詠もうではないか」と参集した人々に和漢折衷の斬新な創作活動を呼び掛けました。当時の大宰府は古代の行政機関であり、大陸文化が最初に入ってくる地でもありました。その長官宅の庭には、当時はまだ珍しい外来の植物であったウメが植えられ、それをテーマに掲げて漢詩文を翻案して和歌を詠むという先鋭的な宴が催されたのです。ではどのような歌が詠まれたのでしょうか?ご紹介していきます。

 

梅の花 折りてかざせる 諸人(もろひと)は

今日(けふ)の間は 楽しくあるべし

(荒氏稲布(こうしのいなしき) 巻五 八三二)

【口語訳】梅の花を折りかざして遊ぶ人々は、こぞって今日一日が楽しいことだろう

 

わが園に 梅の花散る ひさかたの

天(あめ)より雪の 流れ来るかも

(大伴旅人(おおとものたびと) 巻五 八二二)

【口語訳】わが庭に梅の花が散る。天涯の果てから雪が流れ来るよ

 

正月(むつき)立ち 春の来(きた)らば かくしこそ

梅を招(を)きつつ 楽しきを経(へ)め

(紀卿(きのまえつきみ) 巻五 八一五)

【口語訳】正月になり新春がやって来たら、このように梅の寿を招きながら、楽しき日を尽くそう

 

春されば 木末(こぬれ)隠れて 鴬(うぐひす)そ

鳴きて去(い)ぬなる 梅が下枝(しづえに)

(山口若麻呂(やまぐちわかまろ) 巻五 八二七)

【口語訳】春になると梅の梢では姿も隠れてしまって、鶯は、鳴き移るようだ、下枝の方に

 

うち靡(なび)く 春の柳とわが宿の

梅の花とを 如何(いか)にか分かむ

(史氏大原(ししおおはら) 巻五 八二六)

【口語訳】霞こめる春の美しく芽ぶく柳と、わが庭に咲き誇る梅の花と、そのよしあしをどのように区別しよう

 

来月の10月22日には「即位礼正殿の儀」が行われます。これは新天皇の即位を国内外に示す儀式で、国内はもちろん、国外からも国家元首や首脳が参列されます。今年一年かけて行われる即位の儀式の中で、最も重要で盛大な儀式です。

そんな時代の節目、記念すべき2019年はどのような年になるのでしょうか?めまぐるしく変化する時代に焦りを感じることもありますが、万葉の時代から令和の現代まで何百年を経ても、日本人の感性は花の下に生きていることを感じると、ほっとする心地がします。

 

 


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