雛まつりを彩る植物たち

3月3日は雛まつり。女の子の健やかな成長を祈りお祝いする行事ですが、桃の節句とも呼ばれます。ところでみなさん、「桃の花の開花はまだ先なのになぜ桃の節句?」という素朴な疑問を感じたことはありませんか?

旧暦の3月3日は新暦の4月中旬にあたります。つまり、昔の雛まつりの時期には、梅でも桜でもなく桃の花が咲き誇っていました。また古来より桃は邪気を祓う植物で薬効が高く、鬼や悪魔は桃を嫌うとされていました。(桃太郎が桃から産まれたという設定も、このあたりに関係しているという説があります。)桃の節句に桃の花を飾る、由来が見えてきましたね。

そして他にも雛まつりを彩る植物はたくさんあります。雛人形には「桜」と「橘」が飾られますが、これらは向かって左に橘、右に桜が飾られるのが一般的で「左近の桜、右近の橘」と呼ばれています。「・・・左右が逆では?」と一瞬思いますが、これは単なる左右を指しているのではないようです。伝統的なタイプの雛人形は、平安京の内裏にあり、天皇元服などの儀式が行われていた京都御所「紫宸殿」という場所での宮中の様子を模しています。紫宸殿の南庭には、東に桜、西に橘が植えられています。そしてそれぞれの近くに近衛府(律令下での政府機関)として左近衛と右近衛が配陣されていたため、左近の桜、右近の橘となったのです。

やはり橘と桜の共通点も、魔除けの花なんだそうです。桜はよくわかりますが、橘はやや私たちにはなじみのない木花です。橘は高さ2~4mの木で冬も落葉しません。初夏に白い花を咲かせ、黄金色の実がなるミカン科の樹木です。昔から不老長寿の木とありがたがられ、平安神宮や八坂神社にも植えられています。

他にも、最近は桜と橘の代わりに紅白の梅が飾られている雛人形も登場してきました。これは、新暦で生活する私たちの季節感に即して、春の訪れを感じさせる雛祭りの行事を彩るのは梅の花がふさわしいという感覚に寄り添っているようです。

雛祭りという伝統行事ひとつを取り上げて見ても、人と植物との関わり方には遠い昔からたくさんの物語があるのですね。


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